ミステリー短編集
未来の元恋人のために最後の手料理をふるまう、打ち捨てられた元美容師、悲惨な結末を迎えることとなる一本の電話、譫妄へと変貌する不倫...。
ひとつまみの狂気で味付けされ、愛と倒錯が埋め尽くす、パリッと乾いた、常軌を逸したような6篇の短編集...。しかしこれ以上ない人間味が根底にある。はかりごと、嘘、偽り。京都とパリの間で、どこにいても恋は私たちを惑わせるのだ !
関西出身の著者岸田るり子は、現在の居住地である京都を特に好んで描く。Les Éditions d’Est en Ouestが刊行する本作は、彼女のフランスでの第二弾となる。
日本の伝統的な生活や文化の都の街並みが、美しい絵画のように作品の背景として描写されるが、その中で美容師、勤め人、研究者、専業主婦といったごく普通の人たちが変わっていく様が映し出される。読者は傷だらけの愛や未解決犯罪を生きる彼らの転落に驚かされるが、それはあたかも先入観に囚われることをあざ笑っているかのようでもある。
食というテーマは、今もなお日本文化と切っても切れない関係にある。軽やかで、時に滑稽で、驚きの連続でもあるこの短篇集は、飽きのこない「恋の後味」とも言えるかもしれない。
岸田るり子。
1961年京都生まれ。若い頃、科学者の父とともにパリに在住。父はのちに京都のルイ・パスツール研究所を指揮。父の血を受け継ぎ、るり子自身もパリ第7大学理学部を卒業。フランス語が堪能でフランス好きの彼女は、常時パリと京都を往来、作品の多くを自身の演出で上演している。
鮎川哲也賞。
毎年、未発表の推理小説に贈られる新人文学賞で、受賞作品は東京創元社から刊行される。
2004年の処女作『密室の鎮魂歌』で鮎川哲也賞を受賞した後、陰謀とサスペンスを得意とする作家となっていく。『密室の鎮魂歌』の仏訳は2016年、やはりÉditions d’Est en Ouest社からCollection Polarとして出版。このフランスの若手出版社が最初に刊行した本でもある。
初の短編小説集である『味なしクッキー』は、推理小説の血脈に沿って、男女関係や殺人的激愛を際立たせ、驚くような陰謀と閃きが複雑に絡み合う。
原作は2011年に原書房より出版。
12x21 cm
170ページ
出版社のホームページ(フランス語)http://www.editions-destenouest.com/
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